第1回(平成13年度)山崎貞一賞 材料分野

省エネ化に貢献する高強度高加工性次世代電縫鋼管

受賞者 受賞者
代表:豊岡 高明 (とよおか たかあき)
板谷 元晶・依藤 章・河端 良和・小山 康衛・小高 幹雄
代表者略歴
1976年 3月 大阪大学 工学部 冶金学科 卒業
1978年 3月 大阪大学大学院 工学研究科 修士課程修了
同 年 4月 川崎製鉄株式会社 入社
1984年 7月 同 技術研究所 知多研究室 主任研究員
1990年 11月 英国Aston大学 留学
1991年 1月 川崎製鉄株式会社 技術研究所 知多研究室
主任研究員(課長)
1995年 7月 同 技術研究部本部 鉄鋼研究所 鋼材研究部
鋼管研究室 室長
1998年 7月 同 技術研究所 鋼管・鋳物研究部門
部門長 (部長補)
1999年 7月 英国Aston大学 PhD取得
2000年 7月 川崎製鉄株式会社 技術研究所 鋼管・鋳物研究部門
部門長(部長)
現在に至る

研究の背景

 地球の資源にも、また、その浄化能力にも限界があることから、今後我々は限られた資源を有効活用し、地球環境を保全していく必要がある。1997年、京都でのCOP3では、炭酸ガス排出量を大幅に削減することが決定され、これにもとづき、自動車産業においても、燃費向上のために、エンジンの改良と並んで、高強度材料を用いた車体軽量化が進められている。しかし、一般に、鋼材の強度と加工性は表裏的な関係にあり、高強度化すれば、所望の加工ができなくなるという問題があった。また、鋼材の強化方法としては、従来、種々の合金元素添加が行われていたが、スクラップとして用いると、所望の特性が得られない等の問題があって、リサイクルの足かせとなっていた。このような問題を解決できる地球環境にやさしい高強度・高加工性能を有するエコマテリアルの開発が切望とされて来た。

研究概要
1) 開発鋼管の特長
開発鋼管は、図1に示すように、電気抵抗溶接した鋼管を加熱し、ストレッチレデューサで温間域縮径圧延して製造される。従来、縮径圧延は、変形抵抗の小さい熱間域(900〜1100℃)で行われていた。しかし、本研究では、図2に示すように、あえて、熱間域に比べて圧延負荷が数倍となる温間域(650〜900℃)で圧延することで、図3に示すようなミクロ組織、集合組織制御を行い、高強度から高加工性に渡る高機能鋼管を一つの材料から作り分けすることを可能とした。本開発では、このような新しい冶金学的発想に基づく温間縮径圧延を用いた新加工熱処理技術を世界で初めて開発し、従来、実現が困難とされてきた強度と加工性を両立させた次世代電縫鋼管の量産化を実現した。
図1・図2・図3
2)ミクロ組織、集合組織制御
(1)結晶粒微細化
 温間縮径圧延では、写真1に示すように、フェライトの連続再結晶という新しいメカニズムにより結晶粒が微細化し、高強度が得られる。そのため、開発鋼管では、高強度化のためにCu、Cr、Mo、V、Ti等の特殊元素が不要で、リサイクル性に優れるという特長を有する。近年、同様の結晶粒微細化の研究開発が物質・材料研究機構 材料技術研究所のSTX-21プロジェクトや、経済産業省 金属系材料開発センターのスーパーメタルプロジェクトでも取組まれている。
写真1
(2)第二相微細分散(セメンタイトオンライン球状化)
 開発鋼管では、写真2に示すように温間縮径圧延のままでセメンタイトが球状化、微細分散する。温間縮径圧延では、熱延鋼板では十数時間必要な球状化焼鈍を数秒で完了させることが可能であり、製造エネルギーを削減することが可能である。
写真2
(3)高r値化
 温間縮径圧延の圧延集合組織を利用した開発鋼管では、図4に示すように、従来の再結晶集合組織を利用した鋼板では高r値化が困難であった低炭素鋼、高炭素鋼、二相組織鋼、ステンレス鋼等でも、熱延鋼板の約2〜4倍の高r値化が可能である。この効果により、開発鋼管は、著しく良好な曲げ加工性を有する。
図4 開発鋼管のr値
(4)二相組織化
  温間縮径圧延では、圧延温度を適切に制御することで、フェライトとマルテンサイト等の二相組織を比較的容易に得ることができる。開発鋼管では、表1に示すような高強度・高加工性材が得られている。
表1

研究の展望

  開発鋼管は、高強度・高加工性で、かつ、リサイクル性にも優れており、図5に示すような自動車部品用の鋼材として適用検討が進められている。この適用により、自動車部品は、20〜30%の大幅な軽量化が可能であり、燃費向上に大きく寄与すると考えられる。さらに、開発鋼管製造における消費エネルギーも、従来の熱間縮径圧延や熱処理プロセスと比較して、6〜15%削減が可能である。このように、開発鋼管は、経済的メリットのみならず、環境にもやさしい製品であり、地球環境保全の面で鉄鋼材料として今後の貢献が期待される。

図5 開発鋼管の自動車部品適材検討例

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