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第5回(平成17年度)山崎貞一賞 半導体及び半導体装置分野

超小型ICタグチップとその関連技術の開発

受賞者 受賞者
宇佐美 光雄 (うさみ みつお)
略歴
1971年 3月 東京工業大学 工学部 電子物理工学科 卒業
同年 4月 (株)日立製作所 コンピュータ事業部 入社
1991年 2月 同 中央研究所 主任研究員
1992年 3月 九州大学 工学博士号取得
2005年 10月 (株)日立製作所 中央研究所 主管研究長
現在に至る

受賞者 受賞者
井村 亮 (いむら りょう)
略歴
1975年 3月 名古屋大学 工学部 金属学科及び鉄鋼学科 卒業
1977年 3月 同 工学研究科 博士前期課程 修了
同年 4月 (株)日立製作所 中央研究所 入社
1988年 2月 名古屋大学 工学博士号取得
2004年 1月 (株)日立製作所 ミューソリューションズ事業部長
現在に至る

選考理由

 宇佐美光雄、井村亮両氏は、世界最小の超小型ICタグチップ「ミューチップ」の開発とその実用化に成功した。従来のICチップは機械的に脆弱で割れやすいため応用範囲が限定されていたが、受賞者はシリコンチップが0.5mm角以下になると割れにくくなることを見出した。本チップと小型アンテナを実装したものを様々な物体(商品、カード、食物、医療品など)に埋込み、無線でデータ(IDや商品情報など)を非接触に読取り、ネットワーク管理によりモノと情報を有機的にリンクして、誰でも何時でも何処からでも商品情報を得ることによりICタグの応用範囲を大幅に広めることに成功した。
 本開発は、“焼蛎離船奪廚両型化技術(0.4mm角、0.06mm厚)、配線選択によるID書込み技術(IPv6相当の128ビット、改竄不可能構造)、D蕎型アンテナの開発(従来比1/3)、つ礇灰好伴汰技術(片面および両面電極構造)からなるハードウエア技術と、ヌ祇通信プロトコル(コマンド制御不要)、Εぅ鵐拭璽優奪藩用ID管理技術からなるソフトウエア技術を組み合わせ、独創的な超小型半導体チップを用いるシステム全体としてのコンセプト優れている。
 本ICチップは、製品発表後に直ちに世界的に大きな反響があり、応用範囲の広さが注目された。2005年の愛・地球博の予約・入場システムで実用化されたほか、国内では、アパレル受注生産国際流通管理システム、食品流通管理、セキュリティマンションシステムなどで実証実験が進んでいる。国内でICタグ開発を主導するユビキタスIDセンターの標準タグとして認定を取得している。海外においては、米国(San Jose)博物館入場券システム、韓国健康食品トレーサビリティシステム、中国での児童安心通学システム、北欧での数値制御工作機械FAシステムなどで採用され始めている。両氏は、国際的な普及活動も熱心に進めており、また、多数の国際学会招待講演などがある。現在ICタグの事業化企業は海外で約10社、国内で約10社程度あるが、日立のミューチップが量産で市場をリードしている。
 本開発は、半導体部品技術の開発とシステム技術の開発からなるが、コアとなる半導体チップ小型化技術に独創性があり、よって本賞受賞者とする。

研究開発の背景

 本開発は、半導体を用いた無線技術により、非接触でIDを読取るICタグ技術に関するものである。ICタグは、紙幣などの有価証券の偽造防止向けやユビキタス社会を支えるさまざまな用途に大量に使用されるため、そのチップには格段に超小型化・低価格化・高信頼度化が要求される。受賞者は、世界最小(0.4mm角)の超小型ICタグチップ「ミューチップ」とその関連システム技術の開発に成功し、これによりユビキタス社会を牽引する独創的ビジネスモデルを創生した。開発した技術は、超小型ICタグチップ技術、外付けアンテナ技術とその実装技術、内蔵小型アンテナ技術、小型リーダ、ネットワークシステムである。

業績内容

 受賞者は、紙幣などの偽造防止のために、紙に漉き込めるチップの機械的強度を確保し高信頼度化するために、衝撃試験を行い、機械的に脆弱なICチップが0.5mm角以下のサイズで優れた強度向上をもたらすことを見出した。この機械的強度の向上と低価格化を両立させるため、プロセスの微細化のみに頼らずに、0.5mm角よりもさらに徹底して小型化し、低価格化するアーキテクチャを根本から検討し、以下の考案を行った。(1)従来のICタグでは、チップ内に可変情報(来歴情報など)と固定情報(対象物のIDなど)を記憶するメモリが必要であった。受賞者は、可変情報を記憶するメモリをインターネットのサーバに持たせて、チップには固定情報を記憶する配線選択によるROM(Read Only Memory)のみに単純化し、メモリセルの小型化と書き込み回路を不要にした。(2)ROMとすることにより改竄不可のメモリとした。(3)ROM容量をインターネットのアドレス方式であるIPv6相当の128ビットにして小規模化し、かつノンメタ情報コード(数値組み合わせコード)による無限に近いID識別可能方式を採用した。(4)ICタグのROMのIDを重複しないようにトップダウン管理し、トレーサビリティやサプライチェーン向きのネットワークベースのICタグとした。

図1 内臓小型アンテナ技術

 この世界最小のICタグチップを用いた内蔵小型アンテナ技術は図1に示すように通信距離1mm以内の世界最小(0.4mm角)のアンテナ技術である。アンテナとチップ間に低誘電率材料(ポリイミド)を入れて、寄生キャパシタンスを低減し、その分インダクタンスを増大させ、通信距離1mmを達成した。これにより、プライバシ保護を要する紙幣などの有価証券の偽造防止が可能になった。

本業績の意義

 ICタグは、すべてのモノにユニークなIDをつけてモノと情報をネットワークでリンクするユビキタス社会の重要なデバイスである。その目的のために開発された世界最小のICタグチップ「ミューチップ」にはシステム的位置付けと、高信頼性、経済性をもたらす技術において普遍的要素が含まれている。この技術の社会的影響力は大きくまた、今後のICタグの進展に大きく寄与していくことが期待される。


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