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第8回(平成20年度)山崎貞一賞 半導体及び半導体装置分野

エキシマレーザーリソグラフィ技術の先駆的研究と工業化推進

                    
受賞者 受賞者
笹子 勝 (ささご まさる)
略歴
1977年 3月 国立木更津工業高専 電気工学科 卒業
同年 4月 松下電器産業蝓‘社
1978年 4月 同社中央研究所 配属
1985年 4月 同社半導体研究センター 
先端リソグラフィプロジェクト リーダー
1994年 8月 神戸大学大学院 学術博士号 取得
1996年 4月 技術研究組合超先端電子技術開発機構 出向
ArFリソグラフィ研究室長
2000年 4月 松下電器産業蝓\源宰槁半導体社
プロセス開発センター 次世代技術グループ 
チームリーダー
2008年 10月 パナソニック(株)に社名変更
現在に至る

授賞理由

 集積回路技術は、1958年の発明以来、長年に亘り微細化、大規模化、高機能化が推進され、多くの産業の技術革新の中核を担い、市民生活にも電子機器や情報通信システムの普及等を通じて多大な影響を与えている。この発展の原動力の一つとして重要な役割を演じたものが、光リソグラフィを中心とした微細加工技術の高度化である。光リソグラフィの歴史を振り返ってみると、主として水銀ランプ光源g線(波長436nm)、i 線(波長365nm)が量産に使われたが、集積回路のパターン寸法が0.3μm程度に微細化されるとその解像度限界が訪れて、さらに波長の短い光源が求められるようになった。このような状況下で、笹子勝氏は1986年の国際学会(IEDM)において、世界初の実用的なKrF(クリプトンフロライド)エキシマレーザー(波長248nm)を光源に用いたリソグラフィ技術を提案した。リソグラフィ技術では、優れた要素技術を組み合わせた総合化が特に重要視されるが、この提案は、光源のみならず、露光装置、レジスト材料、それを使いこなすプロセス技術まで踏み込んだ総合加工技術であった。その後、笹子勝氏は、さらに光源の短波長化を進め、ArF(アルゴンフロライド)エキシマレーザ(波長193nm)を用いたリソグラフィの実現にも重要な寄与をした。笹子勝氏が継続的に推進した短波長化光リソグラフィ技術は、その後提案された幾多の解像度向上技術と組み合わせることによって、現在の45nm技術ノード世代でも唯一の実用技術となっている。
 笹子勝氏の先見性のある継続的な実用化研究に基づいた成果以外にも、この分野におけるリーダーシップは特筆される。日本においては、1996年にはASET(超先端電子技術開発機構)が設立され、笹子勝氏はArFエキシマレーザーリソグラフィ研究室長として、これまでに提案したArFエキシマレーザーリソグラフィに関する技術を発展させ、日本はもとより世界のレーザーリソグラフィ技術の実用化に多大の貢献をしている。
 以上のように、笹子勝氏の情熱とこだわりを持ちながらリソグラフィ技術の核となる総合化技術の開発を牽引し、半導体産業における連携開発体制の推進でも大きく貢献した点に鑑みて、本賞受賞とする。

研究開発の背景

 半導体産業は微細加工技術と言うテクノロジードライバーによって発展し続け、エレクトロニクス産業興隆の最大の牽引力となった。結果として、パソコン、携帯電話やデジタル民生機器に結実しユビキタス社会実現の到来となっている。その最大のキーテクノロジーは光リソグラフィ露光波長の短波長化であり、世界の多くの先端研究機関が研究開発に挑戦を行っていた。

業績内容

  本研究はその進展に最もインパクトを与えたエキシマレーザーリソグラフィ技術の先駆的開発である。1986年に米国ベル研と同時期に世界に先駈け本格的なKrFエキシマレーザー(248nm)を、1989年に同じく世界初のArFエキシマレーザー(193nm)をそれぞれ開発し、更に1998年に100nm世代の次々世代VUV(153nm)リソグラフィの可能性を発表した。KrFエキシマは1996年より250nm以細の量産化を実現し、ArFエキシマでは90nm以細の量産化技術の目処をたてた。その技術の流れは、現在の最先端の45nm以細レベルのArFエキシマの液浸リソグラフィ技術工業化の源となっている(図1)。

図1.微細化を実現するリソグラフィ技術の進展
図1.微細化を実現するリソグラフィ技術の進展

 光リソグラフィの微細化進展は、露光波長の短波長化とレンズ開口数の増大が重要なファクターである。本研究は、1980年に世界で初めて豊田・難波らのグループが簡易光学系でエキシマレーザー露光によるコンセプトが基点である。そこで受賞者は工業化のため、縮小投影露光での短波長化に注目し、単色のエキシマレーザ光源を適用したことが基盤になっている。エキシマレーザ光源は、そのガス種により更なる短波長化が可能で、KrF(248nm),ArF(193nm)への展開ができた。本研究内容は露光装置からレジスト材料、プロセスに到るまでリソグラフィ技術全体の広範囲に及んでいる。特に、学会、業界での先導的研究とともに、受賞者の発明したエキシマレーザーリソグラフィ技術によるパターン形成方法の特許は、露光波長の短波長化に伴う、レジスト材料の光吸収のトレードオフを克服する基本的出願であり、現在の最先端である45nm以細のArF液浸リソグラフィに対してまで長く効果を有するものである。

図2.開発したKrF、ArFレジスト断面SEM写真
図2.開発したKrF、ArFレジスト断面SEM写真
本業績の意義

 半導体の微細加工技術の進展も光リソグラフィでは飽和すると危惧されたが、国際半導体業界の意欲的ともいえる微細化ロードマップをも確実なものにしたのは、まさにこのエキシマレーザ技術の進展によると言っても過言ではない。最新のロードマップにおいても、2016年までエキシマレーザーリソグラフィ技術がまだ使用されると予測されている。受賞者は今日にいたるまで200件以上にのぼる学会発表・論文掲載を行なうとともに、専門国際学会の設立や世界各国の研究者との技術交流を深め、国際半導体ロードマップ専門委員会等の国際会議での場では常に日本代表として指導的立場にあり、リソグラフィ技術分野で世界的権威の地位を得ている。
 エキシマレーザリソグラフィ(KrF→ArF→ArF液浸)の開発により、世界の半導体産業の250nmから32nmルールまでの量産事業化計画が確立される状況である。すでに65から40nmレベルまでDRAM、フラッシュ等のメモリーやMPUおよびデジタル家電用システムLSIの最先端の半導体LSIの工業化に利用されており、今後も半導体産業の基盤プロセス技術として多大なる経済的な業界貢献が期待できる。

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