• ホーム
  • 受賞者
  • 第13回(平成25年度)山崎貞一賞 半導体及び半導体装置分野

第13回(平成25年度)山崎貞一賞 半導体及び半導体装置分野

埋込フォトダイオードを用いたイメージセンサの開発

受賞者 受賞者
寺西 信一 (てらにし のぶかず)
略歴
1978年 3月 東京大学理学系大学院修士課程 修了
1978年 4月 日本電気(株) 入社
1995年 7月 同社 マイクロエレクトロニクス研究所
センサ研究部 部長
2000年 4月 松下電器産業(現 パナソニック)(株)半導体社
主幹技師
2001年 4月 同社半導体社CCD事業部 グループマネージャ
2013年 6月 兵庫県立大学・静岡大学 特任教授
現在に至る

授賞理由

 寺西信一氏は、1970年代後半から現在に至るまで、35年にわたって固体撮像素子(CCDイメージセンサおよびCMOSイメージセンサ) の研究開発を行ってきた。1980年代に入り、CCDイメージセンサは半導体技術で生産できるので量産性に優れ、小型軽量化が可能なため、コンシューマ向け撮像素子として期待されていたが、残像や、暗電流による白傷が存在するとともに、高輝度被写体撮像時にブルーミング・スミアが発生するなど、実用化直前の困難な時期を迎えていた。
 氏は、独創的な手法で残像を発見し、それが従来構造では素子の動作原理に基づいて発生することを明らかにして、光電変換部に不純物濃度の高いP+層で覆われた埋込フォトダイオードを持ち込む提案をした。これにより、残像を除去するだけではなく、暗電流による白傷の低減、低ノイズ化を実現し、さらに、垂直オーバーフロードレイン(VOD) 構造や遮光構造の発明・提案によって、ブルーミングやスミアを抑制することにも成功した。これらの成果は、関連業界に広く採用され、画素の微細化を推進し、メガピクセル時代を拓いて、HDTV やデジタルカメラの普及に貢献した。2000年代に入り、LSI技術の進展で、埋込フォトダイオードを組み込んだCMOSイメージセンサが台頭して携帯電話カメラに使用され、1000万画素を超える高精細撮影や高速撮影が可能となって、スマートフォンカメラなどを用いた多彩な映像関連製品やアプリケーション産業が登場してきた。2012年には年間28億個に及ぶイメージセンサが製造され、ほぼ全てに埋込フォトダイオードが採用されている。今後の新しい応用も含めて、大きな広がりが予想される。寺西氏が提唱・実証した埋込フォトダイオードは、独創性・先見性に富み、半導体産業の発展に大きく貢献し、その波及効果が極めて著しい。
 以上の理由により、寺西信一氏を第13回山崎貞一賞半導体及び半導体装置分野の受賞者とする。

研究開発の背景

 1970年代後期、カメラにおいて光の像を電気信号に変換する“目”の働きをする固体撮像素子は、LSI技術で生産でき量産性に優れており、小型軽量化が実現できるという長所があり、実用化が期待されていた。しかし、残像がある、白傷・暗電流が悪い、撮像管に比較してSN比が悪い、という欠点が解決できず、実用化直前の苦しい時期を迎えていた。これらの課題を解決し、固体撮像素子実用化の目途を立てることがカメラ業界から強く求められていた。

業績内容

 受賞者は、残像の原因を明らかにした上で、残像を解決し、読出ノイズを無くし、暗電流・白傷を低減できる構造である、埋込フォトダイオード(埋込PD)を1980年に発明し、量産化を実現した。
 図1は従来のフォトダイオード(PD)を用いたCCDイメージセンサの画素断面と電位図である。電位図では、トランスファゲート(TG)がOFFの時は破線で、TGがONの時は実線で示される。N型基板にP型ウェルが形成され、そのウェル内にN+型PD、PDから垂直CCDへの信号電子の転送をコントロールするTG、垂直CCDが形成されている。TGがOFFの蓄積期間にPDでは、入射光によって発生した信号電子が蓄積される。TGがONの読出期間になると、信号電子はPDから垂直CCDへ転送され始める。PDとTGチャネル電位との電位差が転送の駆動力となる。転送後期には電位差が小さくなり、PDに信号電子が残留してしまう。残留した信号電子が次のON期間に転送され、残像現象が発生していた。残留する信号電子の数はランダムに変動するため、ノイズを発生させていた。
 図2は埋込PDを用いたCCDイメージセンサの画素断面と電位図である。N型PDのドーズ濃度を小さくし、完全に空乏化したときのPDの電位をTGチャネル電位より小さくなるように設計していることと、N型PDの上部にP+型のピンニング層が設けられていることが特徴である。信号電子転送の最終段階においても十分な電位差があり、信号電子の転送がスムースに行われ、残像は発生しない。転送後N型PDには電子が1個も残らないので不確定性がなく、無ノイズになる。P+型ピンニング層のお蔭で、生成消滅中心が多数存在するSi-SiO2界面が空乏化しないために、暗電流・白傷が大幅に低減される。暗電流とその画素毎のバラツキ(ザラ)が抑制され、画質が改善されたことを図3に示す。また、N型PDはP+型ピンニング層と新たなPN接合を形成するために容量が大きくなり、飽和信号量が大きくなる。さらには、青感度の向上、電子シャッタの実現がもたらされた。

図1,図2

図3


本業績の意義

 埋込PDを用いたCCDイメージセンサの量産を1987年に開始し、ムービー、コンパクトデジカメの普及に貢献した。埋込PDを用いたCMOSイメージセンサは2002年に量産を開始し、携帯用カメラの普及に大きく寄与した。さらに、ムービーのHDTV化、一眼デジカメなどいろいろな市場に拡大していった。2011年には21億個が販売され、ほぼすべてで埋込PDが使用されている。図4に2011年の用途別販売個数比率を示す。携帯電話カメラ用が68%と大きな割合を占め、PCカメラ、デジカメ、タブレットPC、ゲーム、監視と続く。個数は少ないが、医療、産業用、科学用イメージセンサは重要な役割を果たしている。さらに、ジェスチャ入力や車載用のための距離計測イメージセンサ、細胞観察のためのフォトンカンティングイメージセンサの開発が期待されている。

図4

↑このページの先頭へ