硬X線光電子分光法:HardX-ray Photoelectron Spectroscopy
[HAXPES]硬X線光電子分光法の
分析事例はこちらからご覧ください。
特徴
HAXPESは、XPS(X線光電子分光)の励起光に硬X線を用いた分析手法です。
HX-PES、HXPESとも呼ばれます。
高エネルギーなX線励起により通常のXPSよりも数~約10倍深い、50nm程度までのバルク状態評価、ダメージレスな界面の結合状態評価を行うことができます。
この装置はGaKα線源(9.25keV)を搭載した実験室機のため、試料作製から測定までのタイムラグを短縮可能です。
- バルク敏感(~50nm程度)な状態評価
- 非破壊での埋もれた界面の結合状態評価
- 深い内殻軌道を用いた評価(XPSで重畳するオージェピークの回避、分裂のない1s軌道を用いた解析)
GCIB(Gas Cluster Ion Beam)によるスパッタを併用した測定や角度分解測定、Al線源(1.49keV)、
中和銃、雰囲気制御機構などのオプションも備えています。
- GCIBによるダメージレスなスパッタクリーニング※デプスプロファイルは原則不可
- Al線源や角度分解測定を用いた結合状態の深さ方向比較
- 雰囲気制御機構を併用した大気非暴露の評価
適用例
- リチウムイオン電池Si系負極材、正極金属酸化物のバルク状態評価
- ゲート絶縁膜、キャパシタ材料の界面状態評価
- 金属腐食表面の深さ方向状態変化
- コアシェル型ナノ粒子の結合状態評価
- 有機物のバルク状態評価
原理
HAXPESは、硬X線照射により放出される光電子の運動エネルギー分布を測定します。
光電子の発生原理は以下の通りです。照射X線のエネルギーと光電子の運動エネルギーから束縛エネルギーを算出することができます((1)式)。
Ebは元素およびその電子状態等に固有な値であるため、この値から試料中の元素の同定およびその化学結合状態に関する知見を得ることができます。
装置構成
データ例
データ形式
- PDFファイル:ナロースペクトル(化学結合状態)、波形分離等
- Excelファイル:光電子スペクトルの数値データ等
仕様
検出可能元素 |
原子番号3(Li)以上の全元素 |
搬入可能試料サイズ |
10mm×10mm, 高さ5mm程度まで |
測定可能領域 |
1mm×6mm程度 |
検出深さ |
~50nm |
検出下限 |
1atomic%程度 ※Li,B,Cなどの軽元素は検出下限が高い傾向 |
エネルギー分解能 |
Auのフェルミエッジ<0.6 eV |
雰囲気制御 |
Ar雰囲気 |
スパッタイオン源 |
GCIB |
必要情報
- 目的/測定内容
- 試料情報
(1)数量・予備試料の有無 等
(2)形状・層構造・膜厚・表裏の判断・破壊可否・加工の有無 等
(3)着目元素
- その他の留意点
注意点
以下の場合、評価が困難な可能性があります。別途ご相談ください。
- 表面汚染が顕著
- 表面荒れが顕著
- 溝底部等評価部位の周囲に妨害がある
- パターンのある試料
- 昇華性物質、ガス放出が多く著しく真空度を下げる試料
- 磁性物質
- 毒劇物で飛散しやすい形状の試料 等
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