Solid State Nuclear Magnetic Resonance
装置本体
固体試料管用ローターキャリア
[NMR]核磁気共鳴分析の
分析事例はこちらからご覧ください。
特徴
固体NMRは、試料を固体状態のままで核磁気共鳴分析する手法です。難溶解性試料や溶媒に溶解すると変質する試料に対して、固体状態そのままの構造および物性、結晶構造解析が可能です。
有機化合物では主に13C核のNMRスペクトルを測定することにより、その化学シフト値や積分値から構造解析、定量分析が可能であることに加えて、運動性に関する評価も可能です。無機化合物では、1H核や13C核以外の核を測定する多核NMRにより、その構造解析や結晶性、運動性に関する評価が可能です。
多核NMRで分析可能な核種の例:7Li, 11B, 19F, 27Al, 29Si, 31Pなど
また低周波ユニットを装着することで、低周波領域でも特に対応が難しい下記帯域の測定も可能です。
対応可能周波数帯域:約20MHz~約55MHz (1H:600MHz)
但し、天然存在比やスピン量子数などにより対応できない核種もあります。
適用例
- 低分子有機化合物の固体状態の構造解析
- 高分子有機化合物の同定・定量分析
- シリコーン樹脂の構造解析
- 電池材料(固体)の構造解析
- ガラス材料など固体無機酸化物の構造解析
- フッ素樹脂の構造解析
原理
NMRの原理は左記資料を参照ください。ここでは固体NMRについて説明します。
固体状態の分子は溶液と異なり、分子運動が制限されているため各スピンに複数の相互作用が存在し、異方性をもちます(下記参照)。このため、検出ピークは溶液よりも広幅化します。
①化学シフトの異方性 ②磁気双極子相互作用 ③磁場不均一性 ④核四極子相互作用
このピークの広幅化は構造解析では不利となるため、回転速度を上げるなど測定条件を工夫することでできるだけピーク形状を先鋭化します。ここでは、主に①②を消去するために用いられているMAS、デカップリングについて説明します。
MAS(Magic Angle Spinning)
試料管を静磁場(B0)に対して54.7°に傾けて回転させることで主に化学シフトの異方性や双極子相互作用を消去します。
デカップリング(Decoupling)
13C核や29Si核測定中に、周辺の1H核を照射することで、核種間の磁気相互作用をなくしピークを先鋭化します。固体の場合、スピン結合相互作用を除去する溶液よりも高い出力での照射が必要なため、ハイパワーデカップリングと呼ばれます。
MAS法と併用されることが多く、この方法はDDMAS(Dipolar Decoupling MAS)と呼ばれます。
双極子相互作用
装置構成
データ例
固体NMR による13C-NMRスペクトル
分析対象:HMB(:ヘキサメチルベンゼン、組成式:C12H18)の構造式を下記に示します。構造式には定量に用いた13Cの対象核(a,b)をラベリングしました。
① CPMAS法(Cross Polarization MAS法):
13C核に1H核の磁化を移動して測定する方法で、DDMAS法より短時間で相対的に感度が良い測定が可能です。
② DDMAS法(Dipolar Decoupling MAS法):
13C核を測定中に1H核を照射して感度をあげる方法で、測定条件の最適化により状態別組成比の測定(定量分析)が可能です。
測定の結果、各ピーク(a:約18ppm、b:約132ppm)はHMBのa,b各炭素に帰属されました。また②DDMAS法における各ピークの面積比(積分比)は①と比べてHMBのa位とb位の炭素数比(1:1)に近い値となっており、この方法では定量性のあるスペクトルとなっていることがわかります。
データ形式
仕様
| 測定可能な試料の状態 |
固体(液体は一部可能) |
| 測定に必要な試料量 |
30μL(試料量がこれに満たない場合は別途相談) |
| 測定可能な核種(代表) |
7Li,13C,19F,29Si,31Pなど |
| 測定可能な温度 |
-80~120℃ |
| 磁場強度 |
600MHz(14.1T) |
必要情報
- 分析目的
- 試料情報
(1) 数量
(2) 含有成分
(3) 形態
(4) 成分の推定化学構造
(5) 注意事項試料は磁気を帯びた状態かなど
- 納期
- その他の留意点
注意点
以下の場合、評価が困難な可能性があります。別途ご相談ください。
- 磁性材料は測定できない場合があります。
- 試料形状により測定できない場合があります。
- 測定時の回転による温度上昇のため試料が変性する可能性があります。
[NMR]核磁気共鳴分析の分析事例はこちらからご覧ください。