ガスクロマトグラフ-飛行時間型質量分析計(B0253)

GC/MS:ガスクロマトグラフィー質量分析法

概要

ガスクロマトグラフィー(GC) は、クロマトグラフ法の一種に分類され、主に揮発性成分を分析対象とし て、固定相に対する気体の吸着性あるいは分配係数の差異等を利用して成分を分離する手法です。 ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析計(GC-TOF MS) は、GCで分離した成分の検出に飛行時間 型質量分析計を用いることで、精密質量情報を取得できます。一般的な四重極型質量分析計で得ら れる整数質量情報と比較して、定性分析の確度が向上します。 また、各種イオン化法を搭載しており、ハードイオン化法であるEI法では部分構造情報を、ソフトイオン 化法であるFI法では分子量情報を取得できるため、イオン化法を併用することで定性可能な分析対象 が広がります。
さらに、サンプルをイオン化部へ直接導入することも可能であるため、熱不安定物質や難揮発性物質 などのGCを介した導入が困難なサンプルも評価可能です。

装置外観

ガスクロマトグラフ-飛行時間型質量分析計装置外観

適用例

  • ポリマーの構造解析
  • 有機顔料
  • ポリマー中の添加剤
  • 樹脂中の不純物分析
  • 加熱時の脱ガス成分の分析
  • におい成分
  • 石油製品
  • 残留溶媒の分析

原理

サンプル画像 ■試料導入
気体または容易に気化する液体はGCへの導入が可能です。固体の場合は、分析目的に応じて、 溶媒抽出、熱分解法などで溶液化または気化してGCへ導入します。

熱不安定物質や難揮発性物質は、GCを介さずに、イオン化部へ直接導入します。 FD用プローブに装着したエミッター(アノード) にサンプルを塗布して導入します。
■成分分離(GC)
GCの注入口で気化したサンプルはキャリアガスによって運ばれ、カラム内を通過します。 カラム中の固定相との相互作用の強弱により、サンプル中各成分は成分毎に移動速度に違いが生じ、分離されます。
■イオン化法
〇EI (電子イオン化) 法
GCで分離された各成分の気相分子は、イオン化部に導入され、フィラメントから放出された熱電子と衝突することによりイオン化されます。生成したイオン(分子イオン) の一部はさらに開裂してフラグメントイオンが生成します。イオン化エネルギーが高いハードなイオン化法です。

〇FI (電界イオン化) 法
GCで分離された各成分の気相分子は、イオン化部に導入され、エミッター(アノード) とカソード間に高電圧を印加した高電界中において分子から電子の引き抜きによってイオン化が起こります。フラグメンテーションが起こりにくいソフトなイオン化法です。

〇FD (電界脱離) 法
試料をエミッター(アノード) 上に塗布して、イオン化部に直接導入します。エミッター上の固相分子は、エミッターに電流を流すことで分子運動が活発になり、エミッターから引き離されます。エミッターとカソード間に高電圧を印加した高電界中において、分子から電子が引き抜かれることでイオン化が起こります。フラグメンテーションが起こりにくいソフトなイオン化法です。

■質量分離
各種イオン化法により生成したイオンは、レンズと偏向板の間を通ることで、キャリアガスを排除し、イオン の流れが揃った状態でイオン飛行部に導入されます。
イオンパルサで加速電圧を印加された後、リフレクターで進行方向を変えられ、イオン検出器に到達します。この時、質量の小さいイオンの方が早く検出器に到達するため、検出器までの飛行時間から質量情報を取得することができます。リフレクトロン型のイオン飛行部は、飛行距離を伸ばすことで、質量分解能が向上します。

ガスクロマトグラフ質量分離

装置構成

ガスクロマトグラフ質量分離

データ例

測定試料: ポリイミドフィルムの熱分解生成物
■TIC (トータルイオンクロマトグラム)

トータルイオンクロマトグラム
■マススペクトル
TICで検出されたピークのマススペクトルを解析することにより、成分の構造推定が可能です。 EI法ではフラグメントイオンが検出されやすく、部分構造情報を与えます。また、ライブラリとの比較が可能です。FI法では分子イオンが検出されやすく、分子量の確認に有効であり、精密質量から組成式情報が得られます。
トータルイオンクロマトグラム

[GC/MS]ガスクロマトグラフィー質量分析法はこちらからご覧ください。

MST技術資料No.B0253
掲載日2020/05/13
測定法・加工法[GC/MS]ガスクロマトグラフィー質量分析法
製品分野電子部品
製造装置・部品
日用品
分析目的組成評価・同定

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