ステンレス(SUS)不動態皮膜の深さ方向状態評価と酸化膜厚評価(C0263)
TOF-SIMSで無機物の分子情報を深さ方向に捉えることが可能
概要
ステンレス(SUS)は耐食性に優れ、様々な工業製品・部品として使用されています。腐食に強い材料ですが、経年劣化や加工処理によって表面不動態皮膜の組成に変化が生じると不具合の原因につながります。
今回、TOF-SIMSを用いてステンレス表面の金属酸化膜の状態について分析した事例をご紹介します。
TOF-SIMSでは酸化物状態として分子情報を高感度に得ることで、表面数nm~数十nmの酸化物の分布を得ることができ、イメージ分析によって空間的な分布を評価することが可能です。
データ
TOF-SIMSによるSUS304の測定結果
熱処理によりFe酸化膜が厚くなり、Fe酸化膜/Cr酸化膜の積層構造を保ち成長していることなどがわかります。高感度のTOF-SIMS測定ではNi酸化物の分布を明瞭に捉えることができました。
また、断面イメージ像から平面的には一様に分布している様子が確認されました。
分子情報の深さ方向分析の参考出典;Harumi Masudome et.al.,Surf.InterfaceAnal.2011,43,664-668