EGA-MS法による発生ガス分析(B0229)
GC/MS:ガスクロマトグラフィー質量分析法
概要
試料加熱時の発生ガスの定性分析を行う方法として熱分解GC/MS法がありますが、ここで検出された各成分がそれぞれどのような温度で発生するかを調べる方法としてEGA*-MS法が有効です。この方法は、試料を昇温加熱して発生したガスをGCのカラムを通さずに直接質量分析計に導入する方法です。
本事例ではポリ酢酸ビニル加熱時の発生ガスの温度プロファイルを測定した例を紹介します。
*EGA:Evolved Gas Analysis
分析例
ステップ1 熱分解GC/MS法による発生ガスの定性分析
ポリ酢酸ビニルをHe中で600℃に瞬間加熱し、発生したガスのGC/MS測定を行いました。
二酸化炭素、酢酸ビニル、酢酸、ベンゼン、トルエンなどが検出されました。
ステップ2 EGA-MS法による温度プロファイル測定
次に試料を50℃から700℃まで昇温加熱し、発生したガスを分離カラムを通さずに直接質量分析計に導入しました。サーモグラム(トータルイオンの強度変化)より、A(50~170℃)、B(270~390℃)、C(390~550℃)の各温度領域でそれぞれピークが検出されました。
さらにステップ1で検出された、酢酸ビニル、酢酸、トルエンの分子イオンに相当する、m/z 86, 60, 92の各イオンの強度変化をプロットしたところ、それぞれのイオンが異なる温度領域で検出されることが分かりました*。
*これらのイオンは他の成分からも検出される可能性があるため、各温度領域で発生する成分を正確に確認するには、ハートカットEGA測定(分析手法詳細編B0228)を行う必要があります。