MSDM(Mass Spectra Depth Mapping)による有機ELデバイスの劣化解析(C0413)
質量スペクトルを可視化することで、より高精度な解析が可能です
概要
有機EL(OLED)は高精細ディスプレイ向けパネルや照明用など多様な用途に用いられており、層構造解析や劣化解析のニーズが高まってきていますが、様々な有機材料を組み合わせて形成されているため、元素分析だけでは一部の現象しか捉えることができません。
本資料では、TOF-SIMSによりOLEDの深さ方向分析データを取得し、MSDM(Mass Spectra Depth Mapping)により試料の劣化について知見を得た事例をご紹介します。
データ
図1に、有機ELデバイスの劣化解析結果をMSDM表示にしたものを示します。
※MSDMについての詳細は資料B0221をご参照ください。
スペクトル強度は、劣化前後を比較して下のように表示しています。
スペクトル強度は、劣化前後を比較して
右のように表示しています。 |
劣化後に強く検出された質量 |
白 |
劣化前に強く検出された質量 |
黒 |
劣化前後で差がない質量 |
灰色 |
明暗は拡散や劣化に関する情報を示しており、この結果から以下の5つの知見が得られました。
- 電子輸送層において、電子輸送成分が劣化あるいは拡散に起因して、劣化後に強度が弱くなっている。
- 電子輸送層において、少なくとも2つの質量の劣化成分が生成している。
- 劣化後に電子輸送成分がホール輸送層/ITO界面へ拡散している。
- 発光層において、発光成分は劣化後に強度が弱くなっている。
- 劣化後にホール輸送層Aの成分がホール輸送B側に拡散している。
(発光層側で黒く、ホール輸送層B側で白くなってることによる。)
図2に、電子輸送成分・発光成分・ホール輸送成分AのデプスプロファイルをMSDMに重ね合わせた結果を示します。デプスプロファイルにおいても1,3,4,5と同様の結果が得られていることがわかります。
図1 劣化解析のMSDM
図2 MSDMとデプスプロファイルの重ね合わせ
Electronic Journal別冊「2014 有機ELテクノロジー大全」投稿