3次元NMRを用いたオリゴ糖の構造解析(B0304)
ピークが重複する複雑な有機化合物の構造解析が可能です。
概要
NMRを用いた有機化合物の構造解析では、一般的に1次元NMR (1H-NMR・13C-NMR)のほかに1次元NMR のピーク同士の相関を確認できる2次元NMRを用いてピークを帰属することで化合物の構造を決定します。しかし、類似構造を多数含む糖類などの化合物では2次元NMRでもピークが重複するため解析が困難です。このような場合には3次元NMRが有効です。
本資料ではオリゴ糖をモデル化合物として、3次元NMRを適用した事例を紹介します。
3次元NMR (3D-HSQC-TOCSY) について
3次元NMRの一種である3D-HSQC-TOCSY(3D- Heteronuclear Single Quantum Correlation - TOtal Correlation SpectroscopY)
について、右の構造を例に説明します。

3D-HSQC-TOCSYでは図1のようにx軸とy軸に1H-NMRスペクトルを、z軸に13C-NMRスペクトルをとった3次元スペクトルが得られます。任意のzに対して切断したx-y平面では、そのz値の化学シフトの13Cに直接結合した1Hを含む1H-1H TOCSYスペクトルが得られます(図1左)。また、3Dスペクトルをx軸方向から投影すると直接結合した1Hと13Cの相関を確認できる1H-13C HSQCスペクトルが得られます(図1右) 。
選択スピン系の1H-1H TOCSYスペクトル(xy断面)
隣接し連なった一連の1H (スピン系)を確認することが出来ます。上の例では、「スピン系①を構成するAの13C化学シフトにおけるx-y平面」及び「スピン系②を構成するCの13C化学シフトにおけるx-y平面」を示しています。各y軸で直接結合した1H-NMRのピークが確認でき、x軸方向に隣接し連なった一連の1Hの化学シフトが確認できます。
1H-13C HSQCスペクトル(yz投影面)
A~Cの13Cピークとそれぞれに直接結合したa~cのピークの交点にクロスピークが確認できます。
分析データ
オリゴ糖の一種であるニストースを重水に溶解し、3D-HSQC-TOCSY測定に供しました。
・測定条件
溶媒: 重水(D2O)
測定温度: 室温
試料量: 30 mg

構造が類似しているスピン系A~DもZ軸で分離することで上記のように分離した1H-1H TOCSYスペクトルを得ることができます。上記のスペクトルほか、複数の2次元NMRを合わせることでニストースの1H-NMRについて下の通りピークを帰属することができました。

HSQC-TOCSYは2次元スペクトルとしても取得できますが、3次元スペクトルとすることでよりピーク重複が解消されることがあります。
とくに大型のペプチドやオリゴ糖などの構造解析において有用です。

MST技術資料No. | B0304 |
掲載日 | 2024/10/03 |
測定法・加工法 | [NMR]核磁気共鳴分析
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製品分野 | 高分子材料 バイオテクノロジ 医薬品 化粧品 日用品
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分析目的 | 化学結合状態評価
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