GCMC法を用いたAS-ALDにおけるCu上の小分子阻害剤(SMI)とTMAの競合吸着解析(C0743)
着目の成膜パラメータ(温度、圧力)にて多分子競合吸着性の評価が可能です
概要
領域選択的原子層堆積(AS-ALD)において、小分子阻害剤(SMI)は基板表面でのプリカーサ吸着の表面選択性を制御します。SMIは、基板の非成長表面への不要な堆積を防止し、成膜プロセス中の薄膜形成に重要な役割を果たします。本事例ではGCMC(グランドカノニカルモンテカルロ)法を用いて、Cu(111)表面におけるSMI(アニリン、ピリジン)とTMA(トリメチルアルミニウム)の単分子および2分子種の競合吸着量の予測をしました。本解析は、分子の立体効果まで含めた吸着特性の評価に有効です。
データ
小分子阻害剤(SMI:small molecule inhibitors)
SMIは非成長表面と相互作用することで、堆積反応を抑制し、成膜の領域選択性を実現するために有効です。
計算モデル
アニリン、ピリジン(SMI)とTMA(プリカーサ)の、常温(297.15 K)、常圧(1 bar)時のCu(111)基板への吸着特性を解析しました。
計算結果
アニリン
ピリジン
分子動力学計算から得られた典型的な吸着構造
アニリンは基板に対しほぼ平行に吸着し、ピリジンは斜めに吸着する様子が見られました。
Cu(111)への分子の吸着エネルギー(eV)
| アニリン |
ピリジン |
TMA |
| -1.62 |
-1.13 |
-1.28 |
吸着エネルギーより、ピリジンよりアニリンの方が、Cu(111)との相互作用が強いことが分かります。
①単分子の平衡吸着量(nmol/cm2)
| アニリン |
0.098 |
| ピリジン |
0.148 |
| TMA |
0.101 |
単分子の平衡吸着量は、必ずしも吸着エネルギーの大小関係と相関せず、分子の体積や吸着構造の影響を受けることが示唆されます。
②SMI、TMAの競合時の平衡吸着量(nmol/cm2)
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SMI吸着量 |
TMA吸着量 |
| アニリン |
0.063 |
0.051 |
| ピリジン |
0.088 |
0.062 |
SMI、TMAの競合吸着において、アニリンはピリジンよりも優れた阻害効果を示すと予測されます。アニリン、ピリジン、TMA間の相互作用や、温度、圧力などの成膜パラメータの影響を定量的に評価することが可能です。
| MST技術資料No. | C0743 |
| 掲載日 | 2025/12/11 |
| 測定法・加工法 | 計算科学・AI・データ解析
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| 製品分野 | パワーデバイス 光デバイス 製造装置・部品
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| 分析目的 | 不純物評価・分布評価
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