ハートカットEGA法による発生ガス分析(B0228)
GC/MS:ガスクロマトグラフィー質量分析法
概要
試料加熱時の発生ガスの温度プロファイルを得る方法としてEGA*-MS法がありますが、この方法では発生したガスをGCのカラムを通さずに混合物のまま質量分析計に導入するため、化合物の同定が困難です。このような場合、ガスを一度トラップしてGC/MS測定を行う、ハートカットEGA法を用いることにより、化合物の分離、同定が可能になります。本事例ではポリ酢酸ビニルをハートカットEGA法で測定し、加熱温度による分解機構の違いを明らかにした例を紹介します。
* EGA:Evolved Gas Analysis
ハートカットEGA法とは
試料を昇温加熱し、任意の温度範囲で発生したガスをカラム入り口で冷却トラップ、濃縮してGC/MS測定を行う方法
加熱炉温度:50℃~800℃
加熱雰囲気:He , Air *
* EGA-MS法はHeのみ可能
分析例
ステップ1 EGA-MS法による発生ガス分析
ポリ酢酸ビニルをHe中で50℃から700℃まで昇温加熱し、発生したガスを分離カラムを通さずに直接質量分析計に導入しました。
A(50~170℃)・B(270~390℃)・C(390~550℃)の各温度領域でそれぞれピークが検出され、温度によって検出される成分が異なる(分解機構が異なる)ことが推察されます。
ステップ2 ハートカットEGA法によるGC/MS測定
A・B・C各温度領域の発生ガスをそれぞれトラップ、濃縮し、GC/MS測定を行いました。
- Aからは酢酸ビニルが検出されました。これは発生温度が低いことから残存モノマーと考えられま す。
- Bからは酢酸が検出されました。これはポリマー側鎖の熱分解生成物と考えられます。
- Cからはトルエンなどの芳香族炭化水素類が多数検出されました。これはポリマー主鎖の熱分解 生成物と考えられます。