液体クロマトグラフ-フーリエ変換質量分析法(B0264)
Orbitrap™質量分析計(HRMS)による、高分解能・高精度な分析が可能です。
装置外観
特徴
液体クロマトグラフィー(LC)は、液体中の成分を固定相と移動相の相互作用の差を用いて分離する手法です。
液体クロマトグラフ-フーリエ変換質量分析計(LC-FTMS) は、LCで分離した成分の検出にフーリエ変換質量分析計を用ることで、小数点以下4桁程度までの精密質量情報を高い分解能で取得できます。
そのため、第二同位体イオンに注目したとき、13C由来のピークや34S由来のピークを分離することができ、四重極型やTOF型質量分析計と比較してより高分解能・高精度な組成推定が可能です。
また、イオントラップによる多段階MS/MS(MSn)を行うことが可能で、特定のイオンについてフラグメントイオン(分子イオンが開裂したもの)を得ることができます。MSnのフラグメント化については複数の方法を併用することが可能で、組み合わせてMSnを行うことで未知の化合物の定性分析を精度よく行うことができます。
適用例
- 洗浄液、界面活性剤等の含有成分分析
- 農業、生化学、バイオ各分野の生体材料の定性分析
- ポリマー中の添加剤の定性分析
- 有機EL材料の定性分析
- 溶液中の微量不純物分析
- 溶出物及び浸出物(E&L)試験
- 多変量解析によるサンプル間差異の抽出
原理
■成分分離(LC)
導入された液体サンプルはカラム内を通過していきます。この時、サンプル中の各成分はカラム内の固定相との相互作用の強弱により、成分ごとに移動速度に違いが生じ、分離されます。
■イオン化法
〇ESI (エレクトロスプレーイオン化) 法
イオン性化合物、高極性化合物、高分子化合物の
分析に有効です。
〇APCI (大気圧化学イオン化) 法
ESIと異なり、主に低・中極性の化合物に有効で、
脂溶性の高い化合物、溶液中でイオン化しない化合物の分析に用いられます。
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■イオン開裂方法
〇HCD(Higher energy Collisional Dissociation)
イオンが窒素ガスが充填されたコリジョンセル内を通過し、窒素ガスとの衝突を繰り返すことで開裂します。多次開裂が生じるため、得られるスペクトルでは低質量のフラグメントが多く観測されます。一度に多くの構造情報の取得が可能です。
〇CID(Collision-Induced Dissociation)
リニアイオントラップ内で目的の質量をもつイオンのみに振動エネルギーを与えることで、目的イオンが導入したヘリウムガスと衝突を繰り返して開裂します。HCDと異なり二次開裂は起こさないため、検出されるフラグメントイオンは一次開裂で生成したイオン種が主となります。CIDで生成した任意のフラグメントイオンについては、デュアルリニアイオントラップでトラップし、さらに開裂を行うMSn測定を行うことができ、どのフラグメントイオンにどのような構造が含まれているかという情報を得ることができます。
■質量分離
生成したイオンは質量検出部のThermo Scientific™ Orbitrap™(フーリエ変換質量分析計)で検出されます。
Orbitrap™は中心電極と二つの碗状電極から構成され、碗状電極を中心電極の左右からかぶせたような構造に
なっています。内部にイオンが導入されると、イオンは中心電極の電位によってさらに加速され、m/zごとに
異なる速さで中心電極の周りを周回しながら中心電極の軸方向に振動します。このイオンの振動運動は左右に
ある碗状電極に誘導電流を生じるため、その電流の周波数を記録することでm/zを得ることができます。
装置構成
データ例
■マススペクトル
• TIC(トータルイオンクロマトグラム)で検出されたピークのマススペクトルを解析する
ことにより、成分の組成推定が可能です。高い分解能で測定することで、従来の四重極型や
TOF型質量分析計では分離することのできなかった第二同位体イオンの13C由来のピークや
34S由来のピークを分離することが可能となり、組成の候補を絞り込むことができます。
■MSnスペクトル
プリカーサーイオンにエネルギーをかけてイオンを開裂させると、開裂したフラグメント
イオンを検出したMSnスペクトルを得ることができます。CIDとHCDの二つの開裂手法を
組み合わせることで、構造推定のヒントを多角的に得ることが可能です。
データ形式
・PDFファイル