NMR(核磁気共鳴分析)-混合試料のスペクトル分離 フィルターの利用-(B0281)

単離精製を行わずにNMRで混合試料の構造解析ができます

緩和時間および分子との関連性の説明

NMRは通常、混合試料中の各成分の構造解析を行う場合、各成分を単離精製した後、各々測定します。
一方、単離精製せず混合試料の各成分の分子運動性に着目した測定を行うことにより、スペクトルを分離することも可能です。本資料では、混合試料中の各成分の緩和時間あるいは拡散係数の差を利用した測定方法を用いて高分子あるいは低分子の信号を強調する技術を紹介します。

図1 エネルギー状態と励起/緩和過程(1H核の例)


静磁場中の原子核に電磁波を照射すると、エネルギー差ΔEに相当するエネルギーを吸収して励起状態になります(核磁気共鳴)。電磁波照射を止めたとき、元の状態に戻る過程は緩和と呼ばれ、緩和時間とはこの過程に要する時間です。緩和時間は分子の運動性に密接に関係します。

混合試料のスペクトル分離のデータ例

本例では、実験的に低分子としてエタノールおよび高分子としてポリビニルピロリドンを混合した溶液を、緩和時間あるいは拡散係数の差を利用して分析し、エタノールあるいはピロリドンいずれか1成分の信号を強調したデータを紹介します。

一般的な条件で測定した結果、約3.6ppmでピークの重複が生じました(【1】)。このようにピークの重複がある場合、緩和時間の短いピロリドンの信号を低減させる方法:スピンロック法(T1ρフィルター法)※1で解析を容易にすることが可能です(【2】) 。一方、拡散係数の大きいエタノールの信号を低減させる方法:拡散フィルター法※2で1成分のみの信号を強調することも有効です(【3】)。拡散フィルター法を応用したDOSY法では、一方を強調するだけではなく両者の分離が可能です(詳細編B0282参照

紹介の技術は、混合試料で物理的な分離が困難な試料や
前処理で構造が変化する生体系試料の測定に有効です

※1 スピンロック法:緩和時間の短いスピンを消去するために磁化を固定する方法
※2 拡散フィルター法:磁場勾配パルスにより拡散係数の大きいスピンを消去する方法

MST技術資料No.B0281
掲載日2022/05/05
測定法・加工法[NMR]核磁気共鳴分析
製品分野ディスプレイ
高分子材料
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分析目的化学結合状態評価
構造評価

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